主に女子ボクシングや女子格闘技、ファンタジー系といった趣味のものを書いていきます。
今はpixivにのみ小説を置いてますが、徐々にこちらに移していきます。
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「感想は?」
「最高だね。言うことなし、今度の試合が楽しみで仕方ない」
美奈子に試合の感想を聞かれたアメリアは、嬉しさ満点の笑みを浮かべながら話す。
「いや、そういうことじゃなくて。攻略法は見つかった?」
「真正面からボコボコにするしかないね。」
「だ~~か~~ら〜〜、そのボコボコにする方法を聞いてるの!」
「ミナコはどうなの?」
「う〜〜ん・・・・・・。最初から足使う。でも、あいつ絶対くっ付いてくる。打ち合いに応じて、カウンター。ダメ、あいつと打ち合って勝てる自信ない。足使いながら、疲れるのを待つ?
私の方がスタミナ切れになっちゃう。う〜・・・・、どうすれば良いのよ・・・・・」
アメリアの問いかけに、美奈子は頭を抱えてしまう。動画で見た麻友は、以前と比べても数段腕を上げていた。麻友の性格やファイトスタイルからすると、地道にこつこつと相手を研究し、ファイトプランを練って、自分を鍛えてきたのだろう。言うのは簡単だが、それをやることは難しい。その辺が、麻友のファイターとしての才能と言える。
「ね?頭抱えるでしょ?」
頭を抱えてしまった美奈子を、アメリアは楽しげに見ている。けらけら笑いながら、美奈子の隣に腰を下ろす。
「ま、今回は考える時間もあるし、協力してくれる娘もいる。期待してるからね」
そういうと頭を抱えている美奈子の頭を自分に寄せ、ちゅっとおでこにキスをする。
「ちょっ!!私、そういう趣味ないから!!」
「え?なに?」
思わぬ美奈子の反応に戸惑うアメリア。
「ただのスキンシップだよ。ミナコ、私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけど、いきなりそういうことされるとビックリするじゃない」
「え〜〜、ステイツなら当たり前だよ」
アメリアは、唇を尖らせて、納得のいかないという表情を見せる。
「楽しそうだね・・・・・・・」
アメリアに輪をかけて、不満そうなのが彩華だ。
「何・・・・・羨ましいの?」
「羨ましいに決まってるよ」
(もしかして、彩華ってそっち系の人?)
彩華の反応に口には出さないが、警戒を強める美奈子。心なしか、彩華と距離を取ろうとする。
「美奈ちゃんがスパーして、麻友ちゃんが試合やるんだから、私がやらないっていうのは、友達としてどうかと思う。」
美奈子の想像とは違い、自分だけ蚊帳の外に置かれているのが、彩華には不満だったようだ。
「あ、なんだ。そっちか。ビックリした。」
「そっちって何?」
「いや、なんでもない。ってか、私はしたくてした訳じゃないし、こういうのって友達関係なくない?」
美奈子は呆れながら、不満そうな彩華に突っ込みを入れる。しかし、彩華は聞いてない。
「だから、今度スパーしよ!!」
彩華は、ぎゅっとアメリアの手を両手で覆うように握りしめて、頼む。それを聞いて、アメリアは、ぱあっと明るい表情になり。
「OK!!もちろん!!」
「決まり!!やるからにはしっかりやりたいから、再来週で良い?」
「来月が良いな♪それまでにコンディション整えとく」
まるで遊びに行くかのように話をする2人。
「スパーって・・・・・、彩華のトレーナーとか、美由紀とか、シンシアの許可がいるんじゃ・・・・・」
美奈子は、盛り上がっている2人を見て、現実的なことを考える。いつもは、美奈子も暴走系だが、彩華と一緒にいるとどうも抑えに回ってしまう。
「それは、大丈夫!!今度の試合のために必要って説得する。」
「試合?」
「今度の試合の相手、麻友ちゃんに似たタイプなんだよね。麻友ちゃんに頼みそびれちゃったから、よか・・・・・」
「試合!?」
にこにしている彩華の話を、美奈子は大声を上げて、遮る。
「え、う、うん・・・・・」
美奈子の剣幕に、怯えた表情の彩華。
「いつ!?」
「2か月くらい先・・・・」
「なんで!?」
「な、なんでって・・・・」
彩華は、突然いきり立っている美奈子に困惑している。アメリアは、見ているだけだ。触らぬ神に祟りなしと、関わらないことに決めたらしい。
「なんで私の試合はまだ決まってないのに、麻友とか彩華は決まってるのよ~~!!」
自分の試合が決まっていないのが、相当腹が立つらしい。
「だって、美奈ちゃんこの前試合したばかりだし・・・・」
「それは彩華だって、そうじゃない!! 私に負けたのに!!」
「それを言われると傷つく・・・・」
美奈子の言葉を聞いて、しょんぼりとする彩華。それを見て、美奈子も冷静さを取り戻す。
「あ、ご、ごめん。そんなつもりじゃ・・・・」
「良いよ。」
彩華は、謝る美奈子ににっこりと返す。
「相手ってどんな人なの?」
少し暗くなったムードを打ち消すように明るく聞くアメリア。アメリカ人だが、空気を読める娘のようだ。
「う~~ん、なんかタイの人って言ってた。名前が、ヌンティダー・プサック?ヌーナっていうのが愛称だって」
「ヌーナ・・・・・その娘、試合したことある」
「本当に!!」
「うん、タイに呼ばれて、試合して、勝った。インファイトで打ち合って、2ラウンドもたなかったかな。でも、楽しかったよ」
「そりゃ、勝ってりゃ楽しいでしょうよ」
思わずつぶやく美奈子、一方のアメリアは気にせずに。
「そういうことじゃなくて、強い相手だったら楽しめたってこと。」
「・・・・・・・ファイトジャンキーじゃないんだから」
呆れている美奈子に対して、アメリアはにやにやしながら
「ミナコは、戦うの楽しくないって言えるのかな?」
「美奈ちゃん、絶対楽しんでるよね。私とやった時も楽しそうだったし。」
「そ、そんなことないもん・・・・・」
アメリアと彩華にからかわれ、美奈子は顔を真っ赤にする。
「良かったら、これから私の部屋に来て、試合の動画見る?」
「良いの?」
「もちろん♪もっと話したいし、良かったら部屋で泊って行っても良いよ。」
「え~~~!!嬉しい!!じゃあ、遠慮なくそうさせてもらうね」
アメリアの提案に、彩華は有無を言わずに応じる。会って1日しか経って居ないが、すっかり仲良しだ。
「話がまとまったら、私は・・・・」
「もちろん、ミナコも一緒」
「はあ?」
「美奈ちゃん、一緒に来てくれないの?」
「だって、私、関係ないじゃない。
「それでも、楽しくお泊りしようっていうのに、帰るっていうのはどうかと思う。」
「そうそう、ミナコはそういう娘じゃないよ」
2人に上目遣いに見つめられてしまっている美奈子だが、特に断る理由はなく、2人の圧力に抵抗する術がない。
「分かった。一緒に行く。」
渋々応じる美奈子。手早くジムの戸締りをして、泊まるのに必要なものとお菓子やジュースといったガールズトークに必要なもの(?)を途中で買い込み、アメリアの泊まっている
アメリアが、動画をスタートさせる。リング中央に、アメリア、ともう1人女性が向き合ってる。少しだけ小麦色の肌をして、髪をポニーテールに結い、黒のスポーツブラとベルトラインだけ白だが、他の部分は黒いトランクス、そしてその下に黒のスパッツを履いている。
「そういえば、このタイ人の戦績は?」
「えっと・・・・・・」
彩華は、鞄を手元に寄せ、ごそごそと中を探し始める。そして、手帳を取り出す。
「12戦11勝1敗7KOだって・・・・・・・」
「ってことは、アメリアに負けただけ?」
「・・・・・・かも」
そう言って、2人でアメリアを見つめる。どことなく得意げなアメリア。
画面上では、ゴングが鳴っている。テレビに視線を移す3人。ゴングと共に、アメリアに突っ込んでいくヌーナ。
「く・・・・・・つう・・・・・」
そのまま、アメリアに襲い掛かるヌーナ。アメリアはガードを固めるが、ガードの上から、右ストレート、左右フック、右アッパーと間髪入れずにパンチがアメリアに降り注ぐ。堅くガードを固めているが、じりじりと後退するアメリア。
「これ、きつかったのよね‥・・・」
思い出しながら、苦笑いをするアメリア。
「くう・・・・のっ!!・・・・・・うっ!!」
アメリアのガードが崩されそうになる中、このままじり貧になるのを避けようと、反撃に移ろうとする。しかし、アメリアの右ストレートに合わせて、ヌーナの右ストレートがアメリアに放たれる。寸前に首を動かし、クリーンヒットは避けたものの、右ストレートがアメリアの顔面にさく裂し、もんどりうって倒れる。
「1・・・・・・・2・・・・・・」
追撃しようとしたヌーナだが、アメリアがダウンしたのを見て、笑みを浮かべ、自分のコーナーへと戻る。ダウンカウントが続けられる中、頭を押さえて、回復に専念するアメリア。カウント8で立ち上がる。
「ファイっ!!」
レフェリーが再開を宣言した刹那、このチャンスを逃すまいと、ヌーナが飛び込んでくる。序盤から、右ストレートでアメリアの顔面を再び跳ね上げると、そのままコーナーへと押し込んでいく。
「ふぐっ!!くう・・・・・・がっ!!」
ヌーナは、アメリアをコーナーに追い込み、アメリアに集中砲火を浴びせている。防戦一方のアメリア。ガードを固めながら、ヌーナの攻撃に合わせて、ジャブを返し、決定的なダメージを避けようとする。だが、ヌーナの手は休まらない。そうこうしているうちに・・・・・。
「カー―――ん!!」
第1ラウンド終了のゴングが鳴った。ゴングが鳴ると、ヌーナは満面の笑みを浮かべ、観客にアピールをする。会場を埋める大観衆は一方的に攻めるヌーナに大歓声を上げている。
「本当に勝ったの?」
目の前で繰り広げられている試合を見ながら、美奈子は、眉を顰めて、アメリアに問いただす。アメリアはまたも首を竦め。
「勝ったってば」
「本当に?一方的にやられてるだけじゃん」
嘘くさいとばかりに眉を顰めている美奈子。アメリアの言うことをまだ信じていない。
「そうかな?」
彩華は、美奈子の言葉に疑問を投げかける。
「え?」
「う~~ん、動画だから良く分かんないけど、ダウンした割にはエミちゃん、ぴんぴんしてない?それにあれだけ、攻められてるのにダメージ、そんなにないんじゃ・・・・」
「そうかな?」
このラウンド、アメリアは一方的に攻められていたが、特にダメージを負っている様子はない。彩華は、その点を指摘する。一方の美奈子は、彩華の言うことを疑わしげに聞いている。
「カー―――ン!!」
第2ラウンド開始のゴング。ゴングと同時に、ヌーナはアメリアに向かって飛び込んでくる。アメリアは、足を広げ、その場でヌーナを迎え撃つ構えだ。ヌーナは右ストレートから、左右のフック、そしてアッパーと左右に打ち分けながらアメリアに襲い掛かる。一方のアメリアは、これまでと異なり、ヌーナの攻撃を受けながらも、左右のフック、そしてアッパーを腹部に集中させ、反撃を加えていく。真っ向から打ち合いに応じている。
「がっ・・・・・う・・・・がふ・・・・」
30秒か、40秒ほど、お互いに打ち合っただろうか。徐々に、ヌーナの攻撃がかわされ、アメリアの攻撃の方がヌーナに当たり始める。ヌーナの顔面がアメリアの左右フックで、ぱんぱんと右へ左へと弾かれ、右に逃げようとすると、右フックが脇腹を叩き、元に戻される。リング中央だが、アメリアによって見えない糸につながれたかのように、その場で攻撃を受け続けるヌーナ。ヌーナにとっては地獄の時間だが、ヌーナもただ受け続けるだけではない、アメリアの攻撃が途切れた瞬間、起死回生の右フックを放つ。
「ふぐううう!!!!!!」
どすっという鈍い音が響き、ヌーナがリング中央で固まっている。ヌーナの放った右フックをアメリアはダッキングでかわし、右アッパーをヌーナの鳩尾にえぐりこむ。ヌーナはつま先立ちの状態になり、アメリアの拳に支えられている。数秒間、その状態が続いたが、アメリアが拳を引くと、膝からリングへと落ちる。そして、そのまま、顔をリングにつける。
「うああ・・・・あ・・・・・え・・・・・・うげえ・・・・・」
腹を抱え、尻を突き上げて悶絶しているヌーナ。マウスピースを吐き出すが、目をぎゅっと閉じ、涙をぽろぽろとこぼしながら、苦しさに耐えるので精いっぱいだ。口の端からは絶えず涎を零し、彼女の水溜りの大きさがどんどん大きくなっていく。水溜りは顔の方だけでなく、足の方にも生じている。黒のスパッツを湿らせながら、少し黄色がかった水溜りが彼女の足元に作られる。思わぬ展開に会場からは悲鳴が上がる。
「「・・・・・・・・・・・」」
目の前の光景に、言葉もないという様子の美奈子と彩華。対戦相手のヌーナは決して弱い相手ではない。パンチ力やテクニック、そしてスピードは美奈子、麻友、彩華の上を行っている。どれか一つなら、ヌーナよりも上だという自信はあるが、全部というのは難しい。その相手をねじ伏せたのが、目の前にいるアメリアだ。
「「・・・・・・・・・・・・・」」
「ふう・・・・・・・・」
2人は、アメリアを見るが、アメリアは肩を竦めるのみだ。
「美奈ちゃん、本当にエミちゃんにスパーリングで勝ったの?」
「・・・・・・たぶん」
彩華の問いかけに美奈子も思わず自信のない答えをする。今日起きた出来事だが、目の前の動画を見た後では、夢のように思えてくる。
「ミナコは、私にちゃんと勝った。1ラウンド目で2分もたないでKOされたって言われたよ。」
「ウソ・・・・・・・」
「ほんと・・・・・みたい」
信じられないという表情の彩華に、美奈子はまたも自信のない答えを返す。
「試合の感想は?」
にこにこしながら、尋ねてくるアメリア。画面上では、カウントが10になっても立ち上がれず、担架で運ばれているヌーナを写している。
「え・・・・・・と・・・・・・」
「アメリアって、意外とすごいんだね」
言葉の出てこない彩華。美奈子は、褒めているようだが、聞きようによれば失礼な一言を言う。
「“意外”と?」
アメリアの眉がピクっと上がる。
「え、ええと。そういう意味じゃなくて、ははは」
「・・・・・・・良く美奈ちゃん、勝てたよね」
じと目で睨んでくるアメリアに乾いた笑みを返すしかない美奈子。一方の彩華は、ぽつりとつぶやくのみ。アメリアは、大いに面目を施したようだ。